vol.46 エチュードでも楽しみたい

楽器を習得していく過程で、どうしても避けては通れない教材があります。

それは、エチュード(練習曲)。

楽器を習得する上で、必要な技巧を曲の中で身に付けるために、エチュードはあるともいえます。

そう、エチュードはどんな楽器の練習でも必要不可欠!

 

ところがです、このエチュードを弾いている時、特に子どもの頃だったら、こんな感想が出てきそう。

「なんだか、つまんない」

そういや、私がピアノを習い始めたのが7歳の頃。

バイエルの教則本を終えて、それからブルグミュラーの25の練習曲に取り掛かり始めると、この「なんだか、つまらない」の心境に陥ることがしばしば。

それから、ツェルニーの練習曲になると、もっと嫌気がさしてきて、

「もう嫌や!」になってしまいました。

結果的には中学生になってから音楽に目覚めましたので、このエチュード嫌いは徐々に解消されていきましたけれど、

解消されていなかったら、ピアノを辞めていたかも?

 

 

シマンドルの30のエチュードより第1番
シマンドルの30のエチュードより第1番

さて、コントラバスの学習で必須のエチュードといえば、

シマンドルの30のエチュード。

コントラバスの学習過程において、

このエチュードの練習は非常に大切なもの。

ここを避けて通ることは出来ないと思っていまして、

以前、私が京都市立芸術大学を受験した当時、このエチュードの第17番が入試課題曲になっていました。

それぐらい、大切なエチュードです。

ただ、私がレッスンで取り上げる際、お弟子さんがなるべく音楽として楽しんでもらいたいという思いから、

レッスンでは私がピアノ伴奏を入れます。

数年前にこのエチュードのピアノ伴奏譜が出版されまして、これを使います。

 

 

そして、このエチュードを終えると、どんなエチュードがいいのか?

そこはいろいろとあるのですが、私がお勧めしたいエチュードが次の作品。

 

 

ドメニコ・ドラゴネッティ
ドメニコ・ドラゴネッティ

19世紀イタリアのコントラバス・ヴィルトゥオーゾだった、ドメニコ・ドラゴネッティ

彼がプライベート作品として1840年に作曲されたのが、

無伴奏コントラバスのための12のワルツ

「え、エチュードじゃないの?」

との疑問の声が聞こえてきそう。

そうですね、これはエチュードとして作曲されたのではないのです。

 

ところが、これがエチュードとしてはなかなかいい教材なんですね。

12曲とも、楽曲形式は以下のようなもの。

主題を提示して、その後はトリオ、そして主題に戻って終わるというワルツ形式。

1曲の演奏時間はおよそ3分程度と短め。

これを12曲連続で演奏すると単純に計算して36分、

全曲演奏となると、さすがに飽きてくる可能性があるかもしれませんが、

1曲1曲はなかなかの名作なのではないでしょうか。

では、どこにエチュードとしての要素があるのでしょうか。

次に、その点の分析をしてみたいと思っています。

 

 

ドラゴネッティ/無伴奏コントラバスのための12のワルツ より第1番
ドラゴネッティ/無伴奏コントラバスのための12のワルツ より第1番

エチュードとしての要素は実に多岐に渡ります。

簡潔に申せば、コントラバス演奏に必要な基礎技術は全部入っているのです。

音階、分散和音などの基礎をはじめ、

重音や時折出現するハイポジション、

移弦を必要とするアルペッジョの技術、

フレーズの捉え方、

強弱記号の違い、

スタッカートとレガートの取り扱い、

そして、なによりも音楽表現上の技術。

 

これだけの要素が詰まった12曲ですから、コントラバスの演奏練習の教材として非常に優れたものでしょう。

ただ、難点もあるとは思います。

 

難点の1つは、第4弦を使わないということ。

そもそも、ドラゴネッティは3弦コントラバスを使用しての演奏活動だったものでしたから、

この一連の曲も、3弦コントラバスのために書かれたものなのです。

ということは、第4弦の練習には全く適さないということ。

2つ目の難点は、当然ですが、全曲が3/8拍子のワルツなので、他の拍子での練習にはならないということ。

 

でも、この一連の曲、私はレッスン教材として使用しています。

実際、この曲をこなしていくと、お弟子さんの上達が著しいですし、思わぬ発見も生まれたり、案外演奏解釈も広がるのです。

そして、私自身の練習のメニューにも、このドラゴネッティのワルツは欠かせません。

それに、時折は私自身の演奏活動でも披露しています。

これまでに12曲中9曲を取り上げてきました。

つい先日(2018年7月)も3曲弾きました。

この時の演奏の出来には、自分の演奏に批判的な私ですら好感触でしたからね。

ということは、ちょっとは成長してきているのかなあ?

 

 

ということで、私のコントラバスレッスンの教材、このドラゴネッティの作品は外せないものだということがお分かりいただけましたでしょうか。

「エチュードをエチュードとして弾くのではなく、音楽を弾いてほしい」

これが私の想い。

そうでないと、楽器を練習する楽しみが増してきませんしね。

私も大変気に入った作品、なので、ちょっとした野望も。それは、

「いっそのこと、レコーディングでもして、CDでもリリースしてみようかなあ?」

なんちゃって!

 

2018.7.29