vol.16 野菜の気持ち

今回のコラム、別に食物論議をするのではありません。

これ、立派な音楽のタイトルなのです。

古谷哲也さんが作詞作曲したヴォイス・アンサンブルの楽曲なのです。

 

 

ヴォイス・アンサンブルとは、声を使ってアンサンブルを楽しむというもの。

楽譜は五線譜ではなく、打楽器のリズム譜のようなもの。

ということは、音程という概念はなく、人間の声をあたかも楽器のように扱って音楽を形成します。

 

 

古谷さんが作った「野菜の気持ち」は、5つのパートに分かれています。

1.バナナ(途中で「たけのこ」と言葉が変わる時があります)

2.キャベツ

3.しいたけ(途中で「まつたけ」に言葉が変わる時があります)

4.ポンカン

5.キャベツ

野菜とはあるものの、果物も出現します。

野菜屋さんに並んでいる商品と思えば、確かに売られているものかなあ?

そんなうんちくはともかく、この曲、合唱団のアンコールとか、音楽教室での発表会などでも取り上げられることがあるのではないでしょうか。

演奏時間は2分もないくらい。

実は、その言葉のリズムを当てはめただけの音楽なのに、演奏している方もお客さんも実におもしろいということで、評判のいい作品であります。

 

 

この作品、音楽之友社による高校音楽Ⅰの教科書に掲載されています。

ちなみに、一般流通経路として楽譜入手するなら、やはり音楽之友社が出版しています「女子音楽カンターレ」という楽譜集(女子高校や短大などでの副教材として編纂)にあります。

高等学校の教科書に掲載されているということは、高校生が音楽の授業で取り上げられることが多い作品といえます。

私が現在非常勤講師として勤務しています高校でも長年取り上げられてきました。

生徒たちの評判はなかなかよくって、

9月中旬から10月上旬までは、1年生の教室フロアで、この曲を練習している生徒を見かけることが多くなる不思議な現象が見られます。

 

 

今年度私が担当したクラスでは、ヴォイスアンサンブルの発表会の成果が過去にない素晴らしく楽しいものが全てのクラスで出来ました。

この成果は一体なぜなのか?

詳細な分析は出来ていませんが、ここはうまく総括しておいた方がいいのではと思いました。

そこで、私が考えたこの教材の指導案をまとめてみました。

特に音楽教育関係者の方々には参考にしていただきまして、またご意見ご鞭撻がありましたら、その声を頂戴したいと思います。

2013.10.11

 

高等学校 芸術科(音楽Ⅰ) 指導案

作成者:平田昭浩

 

1.題材 「ヴォイスアンサンブルを楽しもう」

 

2.題材の目標

(1)ヴォイスアンサンブルの楽しさを味わうことが出来る。

(2)楽譜にあるリズムに新たに言葉を創作して、新たなヴォイスアンサンブルを創作する楽しみを味わうことが出来る。

 

3.教材 「野菜の気持ち」(古谷哲也作詞・作曲)

 

4.題材の指導計画(全6時間)

学習内容
1時間目

教材説明の後、グループ分け作業(20分程度)

その際、各グループ定員を5名から10名として、担当パートも決める。

グループ分けとパート決めが終了したら、各パートごとに座席を座り直す。

この時、教室の座席は半円形としたオーケストラ配置のようにする。

指揮者の位置には教師が立つ。

クラス全体で練習開始。

教師は指揮者として各パートの内容を指導して、全体で演奏できるように務める。

曲の途中で授業は終了。

 

 

2時間目

前回の復習を5分から10分で行い、その後は残りの未学習部分を練習。

この授業で全曲をクラス全体で通して演奏できるようにする。

通し練習がこなせたら、グループごとに練習をさせる。

 

 

3時間目

クラス全体で教材復習を行う(5分程度)。

その後、グループごとに言葉を創作してもらい、グループ独自のヴォイスアンサンブルを作詞してもらうことを伝える。

創作する上での参考として、過去の発表会映像を見せることによって、ヒントを探ってもらう(鑑賞時間はレクチャーも含めて15分程度)。

その後、グループ練習に切り替える。

 

 

4・5時間目

終日グループ練習。

教師は各グループを視察するが、言葉の創作に行き詰っている様子が見られたら、創作のヒントを示すなど、アイデア喚起を促す。 

発表会を成功させるよう、休憩時間や朝、放課後にも練習をしておくように指導を促す。

 

 

6時間目

発表会開催。

開演時間までは最後の調整として、グループで練習をさせる。

各グループのタイトルを公表、クラス全員で演奏を鑑賞する。

教師は発表会の様子を録画しておく。

 

 
5.評価
(1)グループが楽譜に書いてある内容をきちんとこなしているか。
(2)グループによる創作内容が聞いている人に楽しみを感じさせているか。