vol.4 ヒンデミット没後50年~その2~

パウル・ヒンデミット
パウル・ヒンデミット

前回のコラムでは、主にコントラバスソナタについて記述いたしました。

ただ、コントラバスソリストとしての私にとって、気になる作品が他にもあるのです。

その曲をいくつか紹介しましょう。

ヒンデミット自筆による楽譜
ヒンデミット自筆による楽譜

実は、ヒンデミットが残したコントラバスのための作品は、

コントラバスソナタだけではなかったのでした。

1927年にやはり奥さまのために書かれたであろう作品が存在しています。

その曲名、「コントラバスのための曲」と翻訳すればいいのでしょうか。

ドイツ語のタイトルは”Stucke fur Kontrabass solo”となっています。

これ、実に変な曲でして、音域は滅茶苦茶低く、無伴奏の音楽ですが、語りのようなものも入っているのです。

また、彼自身が鉄道マニアだったことからなのか、列車の時刻表みたいな書き込みもあったりと、

私としてはどう理解していいのか悩んでしまいます。

ということで、私は楽譜は所有してはいますが、

実際のところ、この曲を演奏会で取り上げようとは現在でも考えていません。

だって、演奏者が?マークを浮かべているのですよ。

お客さんだって?マークが頭の上に浮かぶに決まっています。

 

 

では、これだけだとヒンデミットのコントラバスのための作品はもう存在しません。

そこで、注目した作品があります。

1938年に作曲されました、「チェロとピアノための3つのやさしい小品」がそうなのです。

3つの小品あわせても6分程度の短い演奏時間なのですが、

とてもユニークな音風景に聞こえてきます。

ただ、なかなか演奏機会に恵まれない作品でして、録音もそう多くはないようです。

 

なんでこんなマニアックな作品が気になっているのか。

この曲、実は全曲を通じて、チェロの左手パッセージが1st positionで演奏できるからなのです。

再低音のC(ド)音から2オクターブ上の更に1音上であるD(レ)音までしか音域を設定していないという、

なんだかチェロ初心者向けの曲のよう。

おまけにチェロ特有の重音も存在しません。

「これは、そのままコントラバスでも演奏可能なのでは」と思った私は楽譜を購入。

自宅で弾いてみると、おやおや、なかなかスムーズに弾けるではありませんか。

これは取り上げてみたい!

 

 

ということで、今年のソロレパートリーとしては、

ヒンデミットのコントラバスソナタと3つのやさしい小品を核として用意したいと思っています。

実は、10月に小さなリサイタルを計画中。

そこで取り上げる予定にしています。

2013.4.15