<4>~ベートーヴェンと魔笛
パパゲーノとパミーナの二重唱~
前回に引き続き、「魔笛」のネタの続きです。
第1幕第14場で歌われる二重唱を基に
ベートーヴェンがチェロとピアノのために作曲した変奏曲
「愛を感じる男の人たちには」の主題による7つの変奏曲変ホ長調WoO.46のことを記述します。
原曲はパパゲーノとパミーナの二重唱。
愛こそがすべてで、愛の目的は男と女ほど高貴なものはないということだと歌われる有節歌曲。
「男と女」と歌われ、次に順序を替えて「女と男」と歌われ、
恋愛の世界では男女は対等という表現になっています。
「魔笛」の中心にあるザラストロ教団の男尊女卑の精神とは異なった、画期的な二重唱であります。
なのに、この二重唱はフリーメイスンの高尚な教訓の調性である変ホ長調が採用されているのです。
ベートーヴェンはこの二重唱の性格を変奏曲にも生かしています。
ピアノが奏でる旋律はパミーナ、
チェロが奏でる旋律はパパゲーノという構図が思い浮かぶことが出来るのではないでしょうか。
当然、チェロをコントラバスに置き換えたとしても、
パパゲーノのバリトンをうまく再現できることでしょう。
ところで、この曲のコントラバス版はスイス・ロマンド管弦楽団首席コントラバス奏者だったハンス・フリーバ(Hans Fryba 1899-1982)によって出版されていました。
ところが、この編曲版がほとんどチェロと同じ音域で弾くことを要求されるために、
部分的には大変難しいパッセージが出てきます。
そして、通常のコントラバスソリストが多く採用されているソロ・チューニングによる演奏であるため、調性はホ長調であります。
私もかつてはこの編曲版を使用していた時期がありましたが、
フリーメイソンの関わりを重要視するのであれば、
やはり変ホ長調による演奏がふさわしいのではないかと考えています。
一番演奏が容易なのは、チューニングを変則的に高い方から
As(ラ♭),Es(ミ♭),B(シ♭),F(ファ)とするべきなのでしょうが、
そうすると他の曲との兼ね合いから演奏会では採用しにくいチューニングとなってしまいます。
従いまして、2006年4月9日でのリサイタルではオーケストラ・チューニングによる演奏となりました。
おそらくは、この原曲の調性によるコントラバスによる演奏は珍しいのではないでしょうか。
次回のコラムでは、「魔笛」に登場するある役にスポットを当てます。
2014.5.1