<はじめに>
以下のコラムは2006年に旧ホームページにて掲載された文章を補筆されたものです。
2006年はモーツァルト生誕250年という記念すべき年でした。
この年に私は以下のコラムの文章に絡んだリサイタルを開催しました。
そこでの思い出が強く残っている私でしたので、
コントラバスソリストの私が関わるモーツァルトを独自の視点で記述してみました。
コントラバスソリストがモーツァルト?
そう思われても仕方のない今回のコラムのテーマ、
どんな世界が待ち受けているのでしょうか。
その内容を6回のコラム連載で展開しようと思っています。
<1>~ファゴット作品とコントラバスとの関連~
モーツァルトの作品で協奏的作品やソナタは弦楽器であれ管楽器であれ高音楽器の割合が多いのですが、
低音楽器となると極端に数が少なくなってしまいます。
純粋に低音楽器が独奏的に扱われるものとしてファゴットの作品が2曲現存しています。
まず私たちコントラバス奏者ならファゴット協奏曲変ロ長調k.191のことをすぐに連想することとなります。
事実、この曲のコントラバス独奏版を、コントラバスソリストなら弾いてみたことがある作品なのかもしれません。
私もこの曲を練習で弾いてみることはありますが、
残念ながら演奏会で取り上げることはありませんでした。
ピアノ伴奏版で取り上げることに抵抗を感じていたことが理由ですが、
実際にオーケストラバックで演奏してみることも現状では考えにくいことです。
ということで、この作品を今後取り上げる考えは今のところありません。
そこで考えついたのがファゴットとチェロのためのソナタ変ロ長調k.292(196c)でした。
実はこの曲をチェロとコントラバスのデュオで取り上げるケースが多くあります。
むしろ、原曲の編成で演奏されるケースの方が少ないかもしれません。
事実、私も2004年に私が組んでいるデュオ「Basso Cantabile」でも取り上げました。
勿論、その時はチェロのパートをコントラバスで弾いたのであります。
このソナタが二重奏とはいえ、旋律部分がファゴットでチェロが伴奏に徹しているスタイルであることから、
一度ファゴットのパートをコントラバスで演奏したらどうなるのかを考えるようになりました。
純粋に音楽理論を考えればコントラバス二重奏のスタイルがいいのでしょうが、
私がソリスト活動をしているパターンから、ピアノとのデュオを思いつきました。
幸い、ベーレンライター社からピアノ伴奏の譜面が出版されており、
2006年4月9日のリサイタルではこの楽譜を利用して
「コントラバスとピアノのためのソナタ」と題して演奏しました。
ここでのピアノの役割は左手がチェロのパートの譜面を担当、右手が和声やオブリガートを担当する、いわゆる通奏低音のような役割となります。
あまりにもピアノの役割が伴奏に徹する形となるのにやや退屈な気もしましたので、
第3楽章のロンドでは部分的に繰り返しの2回目をピアノに旋律を担当してもらい、
コントラバスは本来のチェロパートを演奏するということをしました。
理論上、ピアノの左手よりもコントラバスが音域の関係上低く演奏することは禁則なのかもしれませんが、
むしろバロック時代から前古典派時代に流行した低音楽器のソナタのスタイルを再現できるものではないかと音楽史学的に考察しています。
次回のコラムでは、モーツァルトの作品をパロディ的に取り扱った作品を紹介いたします。
2014.4.27