先日、ヒンデミットの珍しい作品を演奏しました。
その演奏会、プログラミングをしてから、ヒンデミットが没後50年という節目であることを知りまして、ちょっとびっくり。
ならば、少しは彼のことを勉強しないとなあと思った次第。
このコラムでは、ヒンデミットについて語ります。
パウル・ヒンデミット(1895-1963)はドイツの作曲家、指揮者、ヴィオラ奏者です。
そして、ヴァイオリンも弾きますし(事実、音楽家としてのキャリアの出発点はヴァイオリン奏者でした)、
クラリネットも吹きますし、
ピアノも弾くというのですから、なかなかマルチな演奏家でありました。
そういや、先日取り上げたクラリネットとコントラバスのための二重奏曲「音楽の花園」も自身がクラリネットを吹いて、奥さまがコントラバスを弾いたということです。
彼が生きた20世紀ドイツは歴史的に見て大変な時代でした。
第1次世界大戦にて従軍していましたし、
後に、ナチスからの弾圧は相当なものだったのです。
1938年以降、スイスやアメリカと亡命生活を余儀なくされました。
それほど苦しい時代を生き抜くことは、今の私には想像できないことなのでしょうか。
ところで、音楽の内容が、いわゆるロマン派音楽から脱して、新即物主義というものを推進していたからなのか、
演奏会で取り上げる頻度は滅茶苦茶高いというものでもなく、
それほどメジャーな地位ではないと思われます。
でも、案外おもしろい作品も多いのですよ。
そして、コントラバス奏者としては、大変に有難い作品が存在しているのです。
その代表的な作品が、1949年に作曲されましたコントラバスソナタです。
ヒンデミットはオーケストラで使われる楽器のほとんどのためにソナタを作曲していまして、
コントラバスも例外なくソナタを書いてくれていました。
これ、コントラバスソリストにとっては、とっても嬉しいことです。
だって、ヴァイオリンやヴィオラ、チェロなんて、いくらでも素晴らしいソナタが存在するのに、
「コントラバスソナタ?誰の作品があったっけ?」なんて言われることの多かったこと。
恐らくはヒンデミットが唯一メジャー作曲家によるコントラバスソナタを作ってくれた人なのです。
有難い有難い。
曲は15分程度、それほど長い曲ではありません。
ピアノはなかなか難しいパッセージが多くて大変ですが、
コントラバスは楽器の特性をうまく活かした、無理のないパッセージがほとんどで、とても弾きやすく、それでいて効果的なのです。
第1楽章は軽快な2拍子の曲。指で弾くPizzicato奏法や、裏声みたいな音を出すフラジオレット奏法などが出てきて、ピアノとの対話も軽妙です。
第2楽章はスケルツォ。あっという間に終わってしまう短い楽章。
第3楽章は一転して眠りの音楽。楽想はまさに荘厳なもの。死に対する追憶のレチタティーヴォのあと、一転してLied(歌)の部分に入って曲は完結します。
私はこのソナタを大変気に入っていまして、
過去に1998年、2000年、2008年と3度取り上げています。
今年はメモリアルイヤーなのですから、是非とも演奏の機会を作らないといけないなあと思っていますが、
果たしてどうなることか?
ところで、このソナタや、先日演奏した「音楽の花園」以外にも、コントラバス奏者の私としては気になる作品があります。
それについては、次回に書くことといたしましょう。
2013.3.25