2004年から、Basso Cantabile(バッソ・カンタービレ)という室内楽ユニットを組んで活動しています。
リュート・モデルノという楽器とコントラバスのデュオによる編成です。
このリュート・モデルノ、マンドリン系の低音楽器で、音域はチェロとほぼ同じ。
Basso Cantabileでは、主にチェロやファゴットを中心とした作品からプログラムを構成して、演奏活動を展開してきました。
レパートリーとしては、18世紀に作曲されたものが多いです。
ボッケリーニ/チェロ・ソナタは次の公演で3曲目にチャレンジしますし、他にも、
モーツァルト/ファゴットとチェロのためのソナタ
バリエール/2台のチェロのためのソナタ
などを過去の公演で取り上げてきました。
勿論、まだ取り上げていない曲目もたくさんありまして、
いろいろと演奏活動の展開を考えるものです。
ところが、悩ましい問題があります。
それは、デュオとしてプログラムラストに位置する曲目がなかなか見当たらないということです。
つまり、古典派の作品に集中していて、ロマン派以降の音楽でこの編成に対応できる作品が非常に少ないということなのです。
チェロとコントラバスのデュオで名曲として知られるのが、
イタリアのオペラ作曲家であるロッシーニ(1792-1868)が作りました、
チェロとコントラバスのための二重奏曲です。
チェロとコントラバスのデュオによる演奏会で、ほぼ確実に取り上げられる曲目として重宝されていますし、
私が考えるには、この編成で、この曲を凌ぐ名曲はなかなか出現しないのではないかと思っています。
ということは、逆に考えれば、この曲以外にプログラムのラストに配置することが難しいということなのです。
事実、我々Basso Cantabileも、この曲をこれまでに何度も取り上げてきました。
しかし、考えてみましょう、いつも公演の度にロッシーニを取り上げるのも芸がないといいましょうか、つまらないとも思われます。
そこで、Basso Cantabileの次回の公演である2014年9月27日には、このロッシーニ作品を封印いたしまして、新たなレパートリーを開拓することとしました。
その曲とは?
これが意表を突く曲目なのです。
イタリア人でコントラバス奏者のヴィルトォーゾとして知られた
ジョヴァンニ・ボッテジーニ(1821-1889)の作品です。
作品名はグラン・デュエット第1番イ長調。
原曲は3曲あるコントラバス二重奏曲の1曲目。
これを、コントラバス奏者でドイツ・ヴュルツブルク音楽大学教授の文屋充徳氏がチェロとコントラバスの編成に編曲しました。
その楽譜が出版されたのは2006年なので、この編曲版による演奏頻度はまだロッシーニ作品には遠く及ばない現状ですが、
Basso Cantabileでは、この曲にこの度チャレンジすることとしたのです。
3楽章制で演奏時間は20分を超える大作。
コントラバスのヴィルトォーゾが作曲したのですから、超絶技巧のオンパレード。
リュート・モデルノ奏者曰く
「こんなに技巧的に難しい作品はこれまでに弾いたことがない」と漏らしていたぐらい。
勿論、コントラバスパートも見せ場が満載です。
19世紀のヨーロッパでの音楽シーンで、超絶技巧が持て囃された時期が長くありましたから、
Basso Cantabileも、そんな時代背景を再現してみるという意図であります。
低音楽器のデュオは、演奏活動を展開するにはレパートリー拡大という障害が待ち受けています。
でも、我々Basso Cantabileは、そのハードルを越えて演奏活動を展開しています。
作品数が不足気味のロマン派以降の作品開拓はこれまでも継続してきました。
2年前の公演でも、
マスネ/コントラバスとチェロのためのデュオ
(実に変な音楽でして、演奏時間も1分半という短さ!)を取り上げましたし、
今回はフランスの作曲家
アルベール・ルーセル
(Albert Charles Paul Marie Roussel:1869-1937)の作品を取り上げます。
曲名はファゴットとコントラバスのためのデュオ。
5分弱の演奏時間で、実にユーモラスな音楽。
こうやって、Basso Cantabileは少しずつですが、進化していきます。
今、これを書いているのが、公演1か月前。
このような演奏活動があることは、みなさまの支えがあってこそなのです。
さあ、がんばろう!
2014.8.24