vol.50 変革を求められた音楽教育の現場~1学期編~

2020年こそ、歴史上絶対に忘れることの出来ない年になることは間違いありません。

新型コロナウイルス感染拡大により、世界は混乱を極めたのです。

そして、この混乱は、このコラムを書いている時点では、まだ収まっていません。

 

 

音楽家としての私は、まだこの混乱の最中にいます。

現段階で、クラシック音楽の現場について論述する材料は持ち合わせていませんし、

まだ予断を許さない状況に変わりはありません。

この時期に、軽々に音楽活動における考察を展開するのは、現在の私には困難なことです。

 

 

ただ、2019年から私自身が再び学校現場で音楽教育に関わっていることから、

これまでの現場の状況を夏休みを利用してまとめておくことは大切なのではないかと考えています。

そこで、1学期の期間、私が体験した音楽教育の現場を振り返ってみます。

 

 

<突然の休校>

今年の2月27日夜、政府からの突然の全国一律臨時休校の報を受けて、

翌日の学校現場は大混乱となりました。

その日、私は担当授業がありましたが、ちょうど各クラス音楽発表会の最終回だったので、

ギリギリ会を遂行することが出来ました。

年度末に音楽発表会的な趣旨の授業を実施している学校は多くあると思われますが、

この臨時休校のタイミングによっては、中止に追い込まれたところもあったでしょう。

この点においては、私は幸運だったと思います。

そして、3学期は評価を出すことなく終了。

3月は成績処理などが通常とは異なる方法で行われ、不思議な感覚だったことを覚えています。

 

 

<4月-5月>

一応、新年度開始の準備をしていたのですが、同時に休校期間が延長になった場合の備えもしておくという状況に。

そのために、準備量は例年よりも半端なく多いものでした。

しかし、緊急事態宣言が発令となり、当然のことながら休校延長に。

私自身は事務処理的に学校に出勤することはありましたが、ほとんどが在宅での処理に。

在宅で担当クラスの生徒に対して、動画配信とレポート作成という形で課題を出していました。

課題内容は音楽鑑賞に関するワークシート作成、楽典に関することなど。

いわゆるオンライン授業ではなく、こちらから一方通行で課題を配信というスタイル。

実は、自宅のネット環境が当初は脆弱でして、4月23日になってようやくネット環境が整備されました。

インターネット環境を整備する工事がもしも遅かったら、この対応は困難を極めていたでしょう。

そして、5月になって、緊急事態宣言が解除され、やがては通常授業に戻るための準備が進むこととなりました。

 

 

<6月>

私が勤務している学校は当初2週間は分散登校で短縮時間割ということで、実技系科目の授業は概ねカットされました。

私が担当する音楽もそうでした。

そして、第3週から通常授業となりました。

ところが、授業のメニューを考案する上で、悩ましい問題がありました。

文部科学省から出ましたガイドラインにある内容でした。

下記にその趣旨をまとめた文書を引用します。

(大分県教育委員会発表ガイドラインより引用)

 

 音楽科においては、当面の間は、原則として、「歌唱」や「器楽(鍵盤ハーモニカ・リコー ダー等)」といった、飛沫感染の恐れがある活動は行わない。

 したがって、当面の間は、年間指導計画の指導順序を変更し、 小学校では、「音楽づくり」や「鑑賞」、 中学校では、「創作」や「鑑賞」などの活動を優先して実施する。

 ただし、「音楽づくり」や「創作」においては、飛沫感染の恐れがない活動を実施する。 

 なお、器楽では、「木琴・鉄琴」などの打楽器や、「箏」「三味線」などの和楽器など、飛沫感染の恐れがない楽器を扱うことは考えられるが、合奏や児童生徒が密集した活動は避ける必要がある。

 

 

つまり、これまでに実践されてきたこの国での音楽教育のメニューがほとんど実施出来ないことになったのです。

そのことから、私もガイドラインに沿った形で授業を行いました。

具体的には休校期間に課題を出していました音楽鑑賞の授業、

そして楽典でした。

ただ、特に入学してきた生徒たちには見過ごせない問題が残りました。

 

 

<校歌が歌えない>

入学してきた生徒が音楽の授業でまずこなさないといけない学習は、校歌を歌うということです。

校歌には、その学校の建学の精神が盛り込まれています。

その学習は音楽教育としてではなく、学校教育の根幹であると私は考えています。

なのに、それが出来ない。

結局、校歌の学習は、まだ実施出来ていません。

ある教育委員会のガイドラインに

「歌唱は心の中で歌うように指導すること」みたいなことがありましたが、

当初、「そんなこと出来るか!」と反発していた私でしたが、

コロナの収束が見えない現状、考え直しが必要かもしれません。

 

 

<実技に飢えていた>

6月末、生徒たちよりも、私の方が座学だけの音楽の授業を遂行していくことに堪えられなくなっていました。

どうにかして実技をする方法はないのか?

器楽の教科書を何気に眺めていたら、ヒントが見つかりました。

その曲、

 

『クラッピング ラプソディ 第1番』(長谷部匡俊作曲)

 

 

でした。

参考までに、私が作成した演奏動画を貼り付けます。

 

 

手拍子だけで音楽が成立するという、楽器や道具は全くの不要。

旋律楽器が必要ですが、授業では私がピアノで担当しました。

授業時数としては2時間を費やしましたが、

生徒たちはほぼ全員サボることなく、夢中になって練習をしまして、

実に楽しい時間をお互いに過ごすこととなりました。

どうやら、実技に飢えていたのは、私だけではなかったようです。

 

 

<コロナ禍により、変革が求められている音楽教育>

実は、まだ1学期しか終了していませんから、コロナ禍の時代にあわせた音楽教育の変革は、まだ道半ばです。

2学期以降、どのように授業のメニューを用意していかなければならないのか、

正直な話、試行錯誤が続くことになります。

ただ、ひょっとしたら、コロナ禍だから変革が出来たこともあるのかもしれません。

先程紹介しました手拍子による音楽は、かなり以前から授業で取り上げている学校もあることから、そんなに珍しいことではなかったのですが、

リズム学習という視点が弱かった(私も含めて)学校での音楽教育現場に改善が行えるチャンスなのかもしれません。

 

いやいや、それ以外にも、まだまだ新しい企画が必要になります。

何が出来るのか、それぞれの学校の環境にもよることでしょうが、

私も現在勤務している学校で、いろいろと実験(良い意味での)を重ねていきたいと思います。

その総括、また記述するつもりです。

 

2020.8.10